私には語りたい事、誰かに聴いて欲しい事があります。それは、昨年末から早春にかけての出来事で、序章は昨年7月から既に始まっていました。

私は、令和5年度認知症介護指導者養成研修に参加させて頂きました。その研修での出来事です。とにかく膨大な課題に追われる事になりました。エントリー時・事前課題・研修初日持参課題・関係機関へのインタビュー等、今から振り返ってもよくやったなと自分を褒めてやりたい。12月、愛知県の研修施設:大府センターで3週間の研修が始まりました。

まず初日、毎日課題提出をしなければならないのですが、パソコンの環境設定やGmailのアドレスの設定が出来ずに、諦めて奈良に帰ろうとしてしまいました。すると、他の受講生から「諦めるな。自分のパソコンを貸してやるから、課題を進めよう。」と励ましてもらい、諦めて奈良に帰ることをとどまる事が出来ました。日々の課題は夜中までかかり疲労困憊で毎日気絶するように就寝していました。

そして、前半の2週間は講義と他施設実習です。科目ごとに試験があり、他施設実習ではスーパービジョンを行っている間中音声を録音して先輩指導者からの指導を受けます。自分の音声を聞いて初めて分かったのですが、私は人の話を遮ってケラケラ笑ってばかりで沈黙に耐えられず軽薄なスーパービジョン…いや、思い出したくない。他施設実習の報告会では10分程のパワーポイントを作成して、1人ずつ発表質疑応答が待っていました。

2週間の大府センターでの研修を何とか終え、この後は個別課題研究に6週間取組みます。担当指導者が個別に指導下さるシステムで、ほぼ24時間繋がっている状態をキープします。とてもとても優しくて褒めてくれるのですが、一向にOKが出ないので研究論文は前に進みません。「早く終えたい。」「早く完成させたい。」「早く自由になりたい。」と先走る私に担当指導者は、「その言葉の意味は?」「どうしてそう思ったのか?」「どうなって行きたいのか?」「そうなったら何故いいと思うのか?」「そう思うに至るまで何があったのか?」等など延々と質問して掘り下げておられました。私は、担当指導者に分かって貰えるように、自分の思考変遷表を作って説明してみました。私の思考変遷表に、興味を示しながら聴いてくださった時、なぜか自分が満たされていくような幸福な気持ちになりました。

答えが見えず「難しいですね」と繰り返す私に、担当指導者が「ネガティブ・ケイパビリティ」という考え方を教えてくださいました。『人間の脳には、物事を理解しようとする傾向があり、性急な証明や理由を求めがちだが分からないことを分からないまま、宙ぶらりんの状態で受け入れ、耐え抜く力や能力をネガティブ・ケイパビリティと言う。稚拙な答えを出すのではなく、その宙ぶらりんな状態を観察し続けることが求められ、深い理解とはネガティブ・ケイパビリティによってもたらされる』らしい。

利用者様の望む生活を深く理解して、声なきこえを聴いていきたいと感じました。

最後に、研修受講にあたりご協力いただいた皆様に、この場をお借りして感謝いたします。

(社内報より)